BY ISABELLA FISH
Gap Inc.の製品サステナビリティ担当ディレクター、Alice Hartley氏が、2025年までにすべてのコットンをより持続可能性の高い供給源から調達するという同社のコミットメントについて説明します
2020年12月、小売大手のGap Inc.は、サプライチェーン全体にわたる追跡によって企業のサステナブルなコットン調達を支援するU.S.コットン・トラスト・プロトコルに加盟しました。さらにGap Inc.は、世界の綿花の50%以上をよりサステナブルな生産手法に転換させることを目指す、テキスタイル・エクスチェンジの2025サステナブル・コットン・チャレンジにも加盟しました。
これは、Gap、Old Navy、Banana Republic、Athletaなど、Gap Inc.のすべてのブランドに共通する誓約です。
2016年から、Gap Inc.が使用するコットンの半分強(57%)がサステナブルな供給元から調達されています。
Gap Inc.の製品サステナビリティ担当ディレクター、Alice Hartley氏が、2025年までにすべてのコットンをより持続可能性の高い供給源から調達するという同社の目標について、Drapers誌に語りました。
Gapにとって、なぜサステナビリティが重要なのですか?
1969年の創業以来、Gap Inc.は、「洋服を売る以上のことをしよう(Do more than sell clothes)」という理念を掲げてきました。私たちは、深く根付いた価値観と、当社の規模を生かして世界をより良くする力となるという責任感を抱いています。そして、人や環境を含む幅広い視点からサステナビリティを考え、当社が事業を行う地域社会にプラスの影響を与える方法を追求しています。
Gap Inc.は、2025年までにすべてのコットンをより持続可能性の高い供給源から調達すると宣言していますが、この課題にどのように取り組んでいるのですか?
私たちは、オーガニックコットン、リサイクルコットン、ベター・コットン・イニシアティブ(Better Cotton Initiative:BCI)、U.S.コットン・トラスト・プロトコルのコットンを「より持続可能性の高い供給源」として定義しています。目標達成に向けて順調に進んでおり、現在、当社のコットン使用量の57%がこれらのプログラムを通じて調達されています。
御社はテキスタイル・エクスチェンジの2025サステナブル・コットン・チャレンジに参加していますが、それはなぜですか?
2025サステナブル・コットン・チャレンジには当社が支援するサステナブル・コットン・プログラムもすでに認定されているため、このイニシアチブに加盟することは理にかなっていました。サステナビリティはいまだ前競争的な段階にある分野であり、協力して取り組むことによって進捗の加速化が可能です。このため、私たちは、志を同じくし、業界全体の変革をリードしたいと考える他のブランドと力を合わせるチャンスを模索しているのです。
御社がコットンに焦点を絞ったのはなぜですか?
コットンはGap Inc.全体で最もよく使われている繊維であり、当社の繊維総使用量の60%以上を占めています。したがって、例えば、年度ごとのフィールドデータを提供してくれる新しいU.S.コットン・トラスト・プロトコルに加盟して、水利用、温室効果ガスの排出、土壌の健康度といった分野の基準の達成に努めることにより、サステナブルコットンのリーダーとなることが、当社にとって非常に重要なのです。また、原材料はサプライチェーン上の影響への重大な寄与因子であるため、サステナブルコットンの目標は、当社の気候・水戦略を後押しするものでもあります。
どのようにしてサステナブルなコットンを御社の製品構成に取り入れようとしているのですか?
サステナブルなコットン調達への参加は、各ブランドが主導する取り組みとGap Inc.のグローバルサステナビリティチームが主導する取り組みの両方によって進められています。認証された再生コットンやオーガニックコットンに関しては、各ブランドのデザインチームが先頭に立って、これらの繊維を使用した生地を選び、そのメリットを顧客に訴求します。BCIとU.S.コットン・トラスト・プロトコルのコットンに関しては、マスバランスに基づく(計算に基づく)プログラムであることから、Gap Inc.が先頭に立ち、各ブランドに代わってこれらのプログラムを支援しています。
再生材料やその他のサステナブルな材料についてはどのような取り組みをしていますか?
当社は、よりサステナブルな原材料の使用を加速するために、さまざまな繊維の環境・社会的影響を評価するGap Inc.推奨繊維ツールキット(PFT)を(2020年9月に)作成しました。このリストには、再生コットン、ポリエステル、ウールのほか、さまざまな天然・合成繊維の推奨選択肢が記載されています。先頃、当社はこのツールをテキスタイル・エクスチェンジ(業界データを収集・公表する世界的な非営利組織)に贈呈することを発表しました。テキスタイル・エクスチェンジは今年、このツールを推奨繊維・材料マトリックス(Preferred Fiber and Materials Matrix)として新たに発表する予定です。私たちは、このリソースを業界と共有することにより、他社ブランドによる推奨繊維の導入加速の一助となればと考えています。
他の動物由来製品についてはどのような取り組みをしていますか?
当社の推奨繊維リストには、当社において最も使用量の多い動物由来繊維である伝統的なウールに代わる推奨代替繊維が含まれています。また、当社のブランドの一部は、責任あるダウン基準(Responsible Down Standard)の認証を受けたダウンやフェザーの使用を開始しています。当社の動物福祉方針は、リアルファーの使用を禁止しており、動物の倫理的・人道的扱いに関する当社の期待を説明しています。
製品づくりの重点を転換するうえで、最も大きな課題となったものは何ですか?
新たな原材料や製造技術の導入時には学習曲線が見られますが、これは往々にして、いかにコストと品質と影響のバランスを取るかという課題をともないます。私たちは、拡張性があり、有意義な影響を生み出す製品関連のソリューションを見つけたいと考えています。
よりサステナブルな製品を目指すこうした取り組みに対して、顧客はどのような反応を示していますか?
サステナビリティに関連したメッセージ発信やストーリーテリングを行ったブランドでは、お客様から大きな反響を受けています。その例が、Banana RepublicでのオーガニックコットンとDry Indigoのデニムのマーケティングや、Gap Teenのコレクションです。
こうしたサステナビリティに対する取り組みを、製品、そして店舗やオンライン上でどのように伝えていますか? グリーンウォッシングにはどう対処し、御社が実際にもたらしている影響をどのように伝えていますか?
グリーンウォッシングのリスクについては強く認識しており、お客様に対する当社の主張が信用できる確かなものとなるように努めています。当社のブランドであるGap、Banana Republic、Athleta、Old Navyは、それぞれ独自の視点からサステナビリティと向き合い、お客様にお伝えしています。サステナビリティは旅のようなものであり、私たちの目標は、たとえ完璧にはなれないとしても、意義のある前進を実現することです。